茶室
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館内に設けられた茶室では、
さまざまな分野で活躍するアーティストが、
茶室空間を自由な発想で捉えて制作した
インスタレーションを発表しています。
展示スケジュール
新里明士
差異を繰りかえす、まだ
Repeat a difference, still
2025年4月4日(金)〜2026年3月1日(日)
今年度の茶室展示は、岐阜県を拠点に国内外で活躍する陶芸家 新里明士(にいさと・あきお 1977-)によるインスタレーションです。
その中心となるのは、新里の代表作「光器(こうき)」。中国古陶磁にルーツを持つ「蛍手(ほたるで)」といわれる技法を取り入れ、独自に進化させた白磁の器で、極めて薄いボディや、そこに連続的に穿たれた夥しい数の穴から、柔らかな光が広がっています。
器の形の美しさもさることながら、その一方で、光と関わることで初めてもう一つの新たな形象が立ち現われているといってもいいかもしれません。その静かで幻想的な様子から、陶芸というよりは、光そのものをテーマとした作品なのではないかとさえ思えてきます。「光器」とは、形や重さを伴った器というよりは、光をより際立たせるための装置のようなものなのではないだろうかという気がしてくるのです。
陶芸作品の美しさを照らし出すための光が、その極薄の器体に無数に穿たれた穴を通過することによって、いつのまにか、光そのものの戯れとして出現する ――― 新里が形づくっていたものは実は、極薄の白磁であると同時に、光を表現するための穴であると解釈することもできそうです。
さて、器の穴の一つ一つは、綿密に計算されたプランをもとに手仕事によって穿たれ、微差のある状態で無数に存在しています。同一の穴が規則正しく並んでいるようでいて、そういうわけでもなく、手仕事ゆえの微細な差異が生じ、それがゆえに、複雑で多様な光の戯れが生み出されています。実は、この差異は、器の穴だけにとどまりません。
展覧会タイトル「差異を繰り返す、まだ」に導かれるようにして、私たちはもう一つの差異に気づかされるはずです。「光器」という物体の形と、穴を通して立ち現れる光の形象 ――― 私たちは、この二つのカタチを無意識に行ったり来たりしているのです。「光器」を見つめる視点は固定されず、二つのカタチを絶え間なく往還します。「光器」は、安定してそこにとどまることなく、常に、そしていつまでも終わることなく、この変成を繰り返していくのです。
「差異を繰り返す、まだ」 ――― こうした作品のあり方こそが、新里が仕掛けた「差異」の本質なのかもしれません。
本展は、茶室に置かれた「光器」だけでなく、それを写しだす鏡、バルコニーに広がる無数の白磁の珠(たま)、重なる輪状のオブジェによって構成されています。展覧会タイトルをイメージさせるこうしたモチーフを通して、作品の美しさを鑑賞するのみならず、この終わることのない差異の戯れにも触れていただきたいと思います。
[観覧料]
- 一般400円(320円)
- 学生250円(200円)
70歳以上と18歳以下の方、および高等学校、中等教育学校、特別支援学校に在学する生徒は無料です。
- 茶室のほか、すべてのコレクション展示室、特選鑑賞室をご覧いただけます。
- ( )内は20名以上の団体料金です。
- 身体障害者手帳、戦傷病者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳をご提示の方と、その介護者(1名)は無料です。
展示作品例



