山口県立萩美術館・浦上記念館|山口県萩市

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讃岐院眷属をして為朝をすくふ図 さぬきのいんけんぞくをしてためともをすくうず

歌川国芳 うたがわくによし

画像:[讃岐院眷属をして為朝をすくふ図]の画像

 文化4~8年(18071811)に出版された曲亭馬琴(きょくていばきん)の読本『椿説弓張月』(ちんせつゆみはりづき)の主人公鎮西八郎為朝が、平家討伐に向かう途中で難破する場面を描いた作品。妻の白縫姫は、海を鎮めようと身を投じ、悲嘆した為朝が自害しようとすると、讃岐院の配下である天狗が現れて助けます。為朝の子、舜天丸(すてまる)を護る家臣の八丁礫紀(喜)平治(はっちょうつぶてのきへいじ)は、忠臣の魂が乗り移った鰐鮫の背に載せられ琉球へと逃れました。これらの場面を国芳は1図に描いています。葛飾北斎が描いた読本挿絵からの影響が指摘されていますが、鰐鮫を3枚続の大画面に渡る巨大な姿に描き、全身を覆う鱗の1枚ごとに描かれたユーモラスな渦巻き文様や、愛嬌のある顔つきは、国芳独自の表現です。霊的な存在の天狗は薄墨で、波の飛沫を白い絵具の飛沫で表現するなど、彩色へのこだわりも見どころです。これらの表現は、絵師である国芳の創造力と彫師、摺師の高度な技によって実現しているのです。

2025年9月30日(火)から10月26日(日)まで
コレクション展・浮世絵「歌川国芳Ⅰ」にて出品

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