東京小梅曳舟夜図 とうきょうこうめひきふねよるのず
小林清親 こばやしきよちか
- 明治9年(1876)
- 横大判錦絵
- 当館蔵
本作品は、明治9年(1876)に、版元の松木平吉から“光線画”と銘打って売り出された、小林清親の5図の作品の中の1図です。
隅田川の東岸、向島の小梅村を流れる曳舟川と小梅堤の夜景が描かれています。江戸時代から、隅田川を起点とする水運が発達していました。向島では、神社巡りの行楽や料亭での遊興に向かうときにも船を使い、風流を楽しみました。川底が浅い曳舟川では、船のロープを川岸から曳いて進ませる“曳舟”(ひきふね)が行われ、歌川広重も作品に描いています。
清親の作品をよく見ると、ロープが見えますが、船は画面の外にある設定で描かれていません。月明かりに照らされて、暗闇に浮かびあがる人物の表現が印象的です。表情や着物は、モノトーンの陰影によって表現されています。
近年の研究では、本来“光線画”という語はカロタイプ写真の訳語であることが明らかになりました。その点から、清親の“光線画”にみられる光と影を合理的に捉えて描くという特徴は、写真の表現に感化された可能性が考えられます。モノトーンを基調とする本作品は、写真との関連性が濃厚に感じられるように思います。
2026年8月25日(火)から9月13日(日)まで
コレクション展・浮世絵「光線画の時代-小林清親」にて出品
コレクション展・浮世絵「光線画の時代-小林清親」にて出品